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予鈴が鳴り終わるとすぐに教室の扉が開いた。
入ってきたのは去年俺のクラスの担任だった兵藤先生だ。失礼だろうが、新鮮味がないと正直感じてしまう。そんなことを考えていたとき、肩をトントンと叩かれた。
「ねぇ、兵藤先生ってどんな人?」
後ろの席から舞依香が小さな声で話しかけてくる。
「ん、別に。俺は特に嫌な印象ないけど。イベント後の打ち上げとかお金出してくれたりもしてたし」
「へぇ~。じゃあいい先生だ」
どうも舞依香のいい先生のラインが謎だ。俺は前に向き直り兵藤先生の話に耳を傾ける。
「今日から2年生だ。新しく後輩も入ってくるのでダメな見本にならないように守るべきところはしっかり守るように」
そうか。特に意識もしてなかったけど、新しく後輩も入ってくるのか。とは言っても部活に入っていない俺にはあんまり関係ないことかもしれないけれど。
「そして2年生になって皆に頼み事も増えてくる。その初めの一つが……委員会だ」
委員会?頼み事ってなんだ? 教室もその言葉にざわめきだつ。
「3年生は本格的に受験のことを意識することになる。委員会の方にも注力できないだろう。だからこそ2年生に委員会を精力的に引っ張っていってほしいと先生方も強く思っている。そんな2年生を見て1年生もきっとまっすぐ育っていくに違いない」
うーん。そんな言うほど1年生は2年生の姿を見るのだろうか。俺が1年生の時はすぐに帰宅してたからあんまり2年生の姿って印象に残ってないような……。
「特に、部活動に所属していない者。是非ともやってほしい。……なぁ、會澤」
こういう時は先生の視界に入りやすい一番前の席になってしまうことの多い"會澤"という苗字を憎んでしまう。兵藤先生と目がばっちり合ってしまう。
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