追憶

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追憶

 夏美と僕は二人とも、かつては東京郊外の公立高校に通っていて、高校3年生の時に同じクラスになった。小柄でどこかあどけない彼女は、勤勉ながらも人当たりもよく、何より容姿端麗で、クラスの男子から人気の女の子だった。僕もまた例にもれず、彼女に密かに恋い焦がれていた一人だった。  彼女とは出席番号の関係で、隣の席になっていた。高校3年生、そこそこの進学校であったこともあり、クラスではほとんどの人が大学受験に向けて勉強をしていた。そうした中で、僕たちはたまたま同じ東京の大学を志望していたのもあって、お互いに過去問のわからないところを教え合ったり、入りたい学部や勉強したいことについて話し合ったりした。 「大学入ったら、楽しいこといっぱいするんだ。」  彼女はそう、口癖のように言っていた。  結局、僕たちは二人とも大学に落ちた。僕は一年浪人して無事第一志望の東京の大学に合格したが、彼女は後期試験を受けて東北の大学に進学した。彼女の親が、浪人を許してくれないということが理由だった。
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