追憶

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 彼女には初めて会った時から、付き合っていた人がいた。テニス部に入っていた彼女の一個上の部活の先輩で、美男美女のカップルとして学校でも評判だった。当然僕もそれを知っていた。  彼女と先輩は卒業するまでずっと付き合っていたようだったから、僕は自分の気持ちなんか伝えられず、また伝えなくても良いと思っていた。そもそも、地味で目立たない僕なんかにとっては、隣の席で勉強を教え合う日々が続いただけで十分幸せなことだったし、その関係に下手なことをして傷をつけたくもなかった。  卒業式の後のクラス会で、お互いまた機会があったら話そうとようやくLINEを交換こそしたけれど、それ以来、3年の間、結局全く連絡をとることはなかったのだった。
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