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喫茶
僕たちは二人で並んで、他愛もない話をしながら、町の狭い歩道を歩いた。町には小さな一軒家がぽつぽつとある程度で、なんだか物悲しい雰囲気だった。昼下がりの町のアスファルトを、蝉時雨が文字通り雨のように叩きつける。その音の雨に降られながら、僕らは道に沿って進んでいった。
やがて、十字路の角にある、小さな喫茶店の前で立ち止まると、彼女は「ここでどう?」と言って、僕の方を見た。僕もうなずいて、薄暗い店内へと入ると、窓際の席に向かい合って、腰掛けた。木製の古びた椅子が、ぎぃー、と情けない音を立てる。窓からの斜陽が、煤けた白机を、まるで光をこびりつかせるかのように照らしていた。
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