喫茶

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「この近くにおばあちゃんの家があってさ、こっちきてからは、そこにおばあちゃんと二人で住んでるの。大学とか、街までちょっと遠いんだけどね。」  彼女は頼んだコーヒーに、砂糖を1袋だけ入れて、スプーンでかき回しながら言った。 「そうなんだ。静かでいいところだね。」 「…良くも悪くもないよ。なんにもないもん。」  彼女はぽつりと独り言のように僕の言葉に返した。目線はかき回しているコーヒーに降りたままだった。 「春樹くんはどうしてるの?大学、楽しい?」 「まあ、ぼちぼち。サークルとか、授業とか。」  僕は、大学に入ってサークルでギターを始めたこと、大学では教育学を勉強していることなんかを話した。彼女は、適当に相槌を打ちながら、でもどことなく寂しそうな顔で聞いていた。 「教育学かー。春樹くん、昔から人に何か教えるの、上手だったもんね。そういえば、受験の時も、色々教えてもらったりしたよね。」 「まあ、二人とも落ちたけどね。」  僕の言葉に、彼女はケラケラと笑った。彼女が笑うと、彼女の頬に乾いた皺がよった。
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