喫茶

3/3
前へ
/13ページ
次へ
「春樹くんはギターも始めて勉強もしっかりやってて。大学生してるなー。」 「いや、夏美も大学生でしょ。」  彼女がおどけたように言うので、僕がそう返すと、彼女は笑いながら、手を降った。 「はは、私、大学休学中なんだよね。」 僕は予想外の返事に、一瞬固まった。 「え…なんで?」 「うーん、ま、色々。」 僕が聞くと、彼女ははぐらかすようにそう言って、また目を下に向けると、空になったスティックシュガーの袋をいじり始めた。 「まあ、よくある充電期間みたいな感じかな。今年の春から休んでるよ。」 「そうなんだ…まあ、そういうの、大事だよね。何事も休むときは休まなきゃね。」  僕はなんて言えばいいか分からず、適当に返しながら、彼女の手に目をやった。彼女の左手の中指と薬指のあたりには、赤いかさぶたの跡があった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加