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黄昏ぼっち
僕たちはカフェの会計を済ますと、そそくさとカフェを出て、無言で道を歩いた。
いつしか日はもうかなり傾いていて、アブラゼミのジイジイという鳴き声はすっかりしなくなり、代わりにヒグラシのカナカナ、という鳴き声が、まるで鈴のように山の中の小さな町に響いた。紅葉はしていないはずの深緑の山の端は、夕焼けの下で、にじむように赤色に染まっていった。僕の前を歩く彼女の影が、少しずつ、少しずつ長くなっていく。
やがて僕たちが歩く道路は、川に架かる橋へとつながった。川の両側の荒れ地には、ススキが所々に群生している。皆一様に、夕凪の中でその白く細い頭を垂れていた。川は穏やかに流れ、水面はゆっくりとさざなみ立つ。夕日のペンキに塗られた川面は、まるでノイズのように揺れた。
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