色の見える少女

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 そして今日も家の前を歩いていく観光客がいた。 「すいません、誰かいますか?」  ほらきた。この辺りで道を尋ねるにはウチしかない。 「はいはい。どうしました?観光ですか」  そこには一人の少女が立っていた。黒髪を肩まで伸ばし、夏に相応(ふさわ)しくないほど白い肌。生命力が薄いというか、どこか儚げな雰囲気を持っている。  俺はなぜか一瞬、その少女に見入ってしまった。 「吸血鬼伝説のある山に行きたいんですが、この道を登って行けば着きますか?」  俺の家は村の端に建っている。つまり、その吸血鬼伝説のある山ってやつに一番近い。 「ああ、それなら2時間くらい登れば着きますよ」  そう言ったが、少女は動かず俺を見つめて佇んでいた。 「…不思議な、色」  彼女の放った意味不明な言葉。  俺はその言葉がひっかかり彼女を見つめたが、彼女は踵を返して山へと走り去った。
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