色の見える少女

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 不思議な色?どういう意味だ?  何かを見透かしたような少女の言葉になんとなく心がざわつく。自分の部屋に戻ると描きかけのキャンバスに向かい、筆をとった。絵を描いている間は落ち着ける。  その夜――  ドンドンと玄関のドアを叩く音が響いた。 「はーい、今でますよ」  俺は玄関のドアを開く。そこに居たのは近所のおっちゃんだった。 「修ちゃん。民宿に帰ってくるはずの学生が帰ってこねえんだ。見かけなかったかい?」  今日の昼間に来た少女の事だろうか?だとするとかなり時間が経っている。 「昼間、山に登るっていう観光客には会いましたけど」 「ああ!きっとその人だ。民宿には一人しか予約が入ってないって言ってたから」  山はそれほど急ではないし熊が出たりもしない。危険はないと思うが、万が一滑落した場合は怪我ではすまないかもしれない。 「今から山に入るのは危険です。警察に連絡しましょう」  俺はそう言って玄関横にある電話を取り、警察へ連絡することにした。
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