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口は災いの元
とある男の部屋
「クソッ!当たり判定おかしいだろ!」
男の手によって放られたゲームのコントローラが、ベッドのクッション性で幾分か勢いを殺して、部屋の壁にぶつかる。
部屋の明かりは消されており、光るのはゲーム画面が表示されたモニターだけ。
切り替え画面で一瞬暗くなったモニターに、無精髭を生やし、髪もボサボサな男の顔が映る。
「・・・チッ」
ゲーム機の電源を切り、椅子の背もたれに体重を預け、天井を仰ぐ。
部屋には中身が少しだけ残ったペットボトルと、汁だけが残ったカップ麺。
それとゲームや漫画の類が所狭しと散らばっている。
「もうこんな時間か・・・」
ゲームの音がなくなったことで、強調を始めた掛け時計の秒針の音。
それが示す時刻が、男にある行動を呼びかける。
『さあ始まりました。オールビット0。この時間はブラックドラゴンがお届けして参ります』
スマホから響く渋い男の声。
ブラックドラゴンと名乗る男が、静かに言葉を紡いでいく。
『全く。こんな日まで仕事なんてやってられるかっての。というわけで、今日はいつもよりローテンションでお届けしまーす』
心底面倒臭そうに語る男の声が、不思議と安心感のようなものを演出していた。
『お便り頂いてまーす。ラジオネームL師弟「ヘイ。ブラックドラゴン。目が虚ろだぞ。ドラック決めとん?薬に手出せばお前も終わり。セイアンサー。フラッグオワコン」』
リスナーからのお便りを淡々とした調子で読み上げ、暫しの間沈黙するブラックドラゴン。
『あー。ラップってことね。フロウ無しじゃ気づかんかったわ。L師弟だっけ?ネタ臭えぞ。温かい風呂に入って寝てな。じゃないと身体も空気もこごえるしねえ』
お便りに合わせて、ブラックドラゴンもラップ調で返す。
「おー、ブラドラさすがだなあ」
ブラックドラゴンのアンサーに唸りながら、全身灰色の寝間着姿の男は、机の上に置かれたPCを起動した。
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