とある湖畔のアパートにて

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香代は手紙を読んでいる。 「俺の方もさ、仕事辞めようかと考えてる。あまりここから離れたくはなかったけど。でも、やっぱり居るべきじゃないって思って。すぐに決断すべきだったかな。どうなんだろ。アパートが職場から離れてたのは良かったよ。回りに知ってる人もいないし。だよな、ここも引っ越した場所だから当たり前なんだ。元々転々としてきたから別に抵抗もないけどさ。選ばなきゃ仕事なんていくらでもあるし」 香代は壁に寄りかかり、続きを読まずに手紙を床に置いた。六畳一間の部屋、家具といえば簡易なテーブルだけで、布団は敷きっぱなし。背の低い冷蔵庫と小さな液晶テレビ。彼女がここに入居して日が浅いことが分かる。
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