とある湖畔のアパートにて

3/8
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
今の雄介の姿が目に浮かぶ。香代はペンを置いて寝転がりぼんやりと天井を眺めた。 あいつは、雄介はまだマシな男なのだろう。私がこっちに来てからも手紙を送って。いい加減なヤツだったら、あの時点で私とは縁を切って姿をくらますに決まってる。あいつと付き合ったのは不幸中の幸いだったのかな。 ちゃんと返事しないと、香代は起き上がって再びペンを持った。 「あなたがそこに住みづらいのなら、転居を視野に入れてください。このままあなたが迷った日々を送るのは私にとっても心苦しいことです。確かに避難先は幾らでもあるかもしれない。こんな書き方をしてごめんなさい。でも私も、こっちに来たからといって楽にはなれません。それはお互い様ですね。当然時間がかかることでしょうから。焦らずに考えて正しい決断を下してください」 今はもう付き合ってはいない、雄介は友達でもない。丁寧語を使った他人行儀な文章、それを一つ一つ繋げていくことが香代にはつらかった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!