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翌日、彼女は九時過ぎに目を覚ました。ゆっくりと起き上がり、冷蔵庫からお茶のボトルを出して少し飲んだ。
もう、全然寝た気がしない。
前はこんなことなかったのに。元々眠りは浅い方だったけど、最近は酷いな。
さっとカーテンを開けた。光が室内を弱く照らした。窓を開けると、ヒュウッと風が吹く。香代は窓枠に腰かけた。角部屋だから、目の前の湖の光景を心ゆくまで観賞できる。
不動産屋は、この風景はタダですよ、うらやましいですねなんて言ってたっけ。
だが、その湖の姿は特に明媚というわけでもない。どこにでもある池か沼を、そのまま巨大化したというような。街中の大きな川を橋上から眺めるのと大差ない。それを見る香代の目にも張りがなかった。
あの時以来、ずっと体も心も重い。すっきりしたことなんか一日もない。
しばらくは、うなだれるしかないのだろう。
香代は長い溜息をつき、鈍い動きで大きな明るい色のシャツを着た。沈む心を少しでも前に向けようとして。
部屋にいたら窒息しそう、外で朝食でも。
彼女は顔に強く水を当てて洗い、部屋を出た。
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