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園児たちの遊びを見たり、一緒に遊ぶのも好きらしいのだが、「今の流行りをチェックするのも乙女よの」との座敷童子の一言で、意識がそちらに向いているようだ。
流行り、というのを知ったカワジの話を聞くのもまた楽しく、最近では若草色の兵児帯の中に誇らしげにお土産を忍ばせるようになり、それを出す時のこちらの反応を窺う期待に満ちた顔を思い出し、兄さまは微笑む。
「気をつけて」
行ってしまったが、これも日課のように口にすると兄さまは寺院風の礼拝堂へと戻った。
一方、カワジはぴょんぴょんとスキップするように、アーケード内を走っていた。
ここ十数年、目の色や髪の色がいろんな人がたくさん通るようになり体格もばらばらで面白い。その間を縫うように通り抜けていく。
アーケードが一度途切れ、秋晴れの爽やかな太陽の光が差す。
眩しさに眉をひそめ左に折れると、つきたてのお餅と餡子の匂いによだれを垂らしながら、猿沢池の方へと向かった。
すぐ左上手には興福寺があり、南円堂へと続く階段を通り過ぎようとした時、涼やかな声が降りてきた。
「カワジ」
三面六臂の美少年がカワジを呼び止める。
上半身裸で条帛と天衣をかけた姿は、いつ見ても神々しい妖仲間だ。
「アシュラ」
カワジは相手を認めると足を止め、階段の上にいる美少年を見上げる。
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