ベイビーロボット

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 ━━━━紗千香は色の白い、滑らかな肌をしていてまつ毛の長い赤ちゃんだ。緩やかな柔らかい癖のある毛に少し頬がピンクのところが他のどの赤ちゃんよりも可愛いと親バカだが何時も思っている。紗千香の祖母も祖父も可愛がって近所から顔を見に来てくれている。まだ仕事を現役でしているので忙しいのか、長時間はいない。チラリと顔を見て帰るだけだが、目を細めて紗千香を見るさまは本当に可愛いんだろうなあ、と涼香も微笑ましく思う。夫の秋生も勿論のこと紗千香にべた惚れだ。この子は自慢の娘だと涼香は身体を叩いてあげながら、その顔を見て思う。大事に育てよう。   トン、トン、トン、トン、リズム良く紗千香の背中を叩く。まつ毛をフサフサさせて瞑っている目の眼球が動くのが分かった。涼香は立ってリビングを出る。紗千香はスヤスヤと寝息をたてている。少しお昼寝をさせてあげよう。  30分くらい経った時だった。  「ママ、ママ、まんま」  リビングのドアの隙間から紗千香が顔を出す。床に敷いた布団の上で寝ていたのにハイハイをしてきたようだ。涼香は玄関の掃除をしていた。 「あらぁ、紗千香ちゃんはさっきガソリンを飲んだばかりじゃない」 「オイル、オイル」 「まあ、オイルも足りなかったのね。オイル交換しましょうか。そうだ、灯油を飲む?」  涼香はリビングの窓を開けてポリタンクから灯油を哺乳瓶に入れた。 「ほら、灯油よ。大好きでしょ。好きなだけ飲んでちょうだいね」━━━━  ━━━━紗千香が我が家に来るまで篠崎涼香には子供がいなかった。涼香は28歳、夫の瑛太は30歳、まだそんなに急かなくても充分若いし、余裕綽々としててもいい年齢だが、赤ちゃんは早く欲しいと思っていた。欲しい、欲しいと考えるようになって約3年間ほどになるかな。涼香は期間としては短いが妊活に励んでいたのだ。━━━━
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