ベイビーロボット

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 涼香は鉄製の部品を作る為のプレス金型の設計事務所で働いている。今は育休で家に居ることが多いが当時はバリバリ働いていた。設計する部品は主に車関係だ。たまにそれ以外の部品を作る設計もする。そこでパソコンを使いCADというソフトを使用し3次元のモデリングをしているのだ。女にしては珍しい職業で同僚は男性ばかりである。事務職の女の子は23歳でまだ結婚をしていなく彼氏もいないらしい。10人いる職場内で女性は2人だけだ。他には設計士が5人いて営業職や社長といった男性がいる。   あれは半年前の事だった。上司に肩を叩かれ、こう言われた。 「篠崎さん、今度、外国の支社から研修生が来るんだ。そこの取引先の社長さんが挨拶にここに来ることになってる。涼香ちゃんは英語が出来たよな?」 「でも少しだけです。日常会話くらいしか出来ません」 「日常会話が出来れば十分だよ。通訳も来るかもしれないと言っていたからね。ああ、篠崎さんがいて良かった。接待を頼むよ」   上司は満足そうに頷いた。この会社は支社が外国にあって、近隣の国やヨーロッパなどから研修や会議をしに外国人が来るのだ。涼香は英会話教室に少しの間だけ通っていた。上司は挨拶くらいしか喋れないので頼りにされていたのだった。 「今度は何処の支社からいらっしゃるんですか?」 「あ、ドイツの支社だよ。大手の企業からね、新規の精密機器の設計を頼まれたらしいんだ。取引先はロボットメーカーだよ。お掃除ロボットを開発した会社だ。今度は新作を作るらしい」  ロボットかあ。あまり詳しいジャンルではないが犬のロボットは欲しいと思っていた。家は二階建て一軒家なのでペットは飼えるが仕事が忙しい。構ってあげる暇など無いだろうと思っていたのだ。それに赤ちゃんが産まれた時にペットを飼っていると、毛やアレルギーが怖い。  ━━━━その時はまさか、赤ちゃんのロボットの製作に携わるとは想定していなかった。涼香は思い出して顔が綻ぶ。━━━━
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