第一章 生活の一部

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「こんばんは。お仕事、終わったの?お疲れ様。」 画面の向こうで笑顔を見せるあの人。 「こんばんは。うん、帰宅したところ。」 声をかけてくれたあの人にコメントを打つ私。 目の前にいてもはじめから遠い人だった。 近いようで遠い人。 一度、目を離すともっともっと遠くへ行ってしまう人。 何気なくダウンロードした動画配信アプリ。 そこで出逢ったあの人。 画面の向こうで話す姿とコメントで会話してるうちに一度も逢ったこともないのに毎日、逢っている感覚に襲われる。 私からあの人の顔は見えていても、あの人から私の顔が見えない。 とても近く感じるようで実は遠い遠い人だった。 触れることもできない、温度を感じられない。 ただ笑顔や声は毎日届けてくれる。 逢いたくてアプリに課金をすれば、それだけ笑顔をくれるけど、心の距離は遠くへ遠くへ行ってしまう。 動画配信のキャストとリスナーの関係。 私はただの金づる。
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