§3

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「あいつから聞いてますよ。甘いもの食べて、お仕事頑張ってください」 「あ……ありがとう」  最初に持ち帰り分を買おうとしたときの会話を、唐島が覚えていたなんて意外だった。あんなささやかなやりとりを。  ロゴ入りの紙袋を受け取る指先が浮つく。  こんな些細なことで特別扱いされたつもりになって喜んでいるなんて、淡い片想いで終わったあの初恋から何も進歩していない。そう思うのに、店からの帰り道の足取りが自然と弾んでしまう薫だった。
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