§4

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「気まずくなるかもって不安になってるうちは、告白なんてしたって無駄だよ」 「へ?」  予想外に強い唐島の口調に、薫は目をぱちくりさせてしまう。 「俺なら、言えるようになるまで粘る」  言えるようになるまで。 「……それって、いつまでだ?」  唐島は店の制服のベレー帽を取って、金髪を尻尾のように結んだ後頭部に手をやる。 「正直に、あんたに恋愛感情を持ってるんだけどそれでも傍にいていい? って訊けるようになるまで。そこで『だめ』とは言われないだろうって自信が持てるようになるまで」  きっぱりと断定する唐島の迫力に呑まれそうになる。 「相手にとって、恋愛感情を抜きにしてもどうしても必要な人間に自分がなればいい。そうすれば、どう転んでもこっちの勝ちですよ」 「……お前、すごいな」  そんな強気で一途な発想は、自分にはまったくなかった。心底感心して、薫にしては珍しく思ったままを率直に口にする。 「俺なんかよりお前の方が、よっぽど悩み相談の相手に向いてるよ」  それなのに唐島は素っ気なく首を振る。 「俺がアドバイスなんかしたところで、相手を怖がらせるのがオチだ」 「んなことねえだろ。俺なんかよりよっぽど頼りがいがあると思う」 「頼りがいがあると思われてるのは、愛さんの方でしょうが」 「頼りがい? どこがだよ」 「だって高校の頃も、よく女子の相談に乗ってたし」 「あれは、なんていうか」  悩み相談なんて大げさなものではなかった。自分は彼女たちの恋愛対象の埒外にいたというだけの話だ。
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