§7

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 つまんだ苺の先にクリームが付いているのを、味を確かめるみたいにぺろりと舐めた。  色が薄く感情を読み取りにくい唐島の目が、刺すように薫の口元へ向けられる。 「嘘だと思うなら、お前も食ってみろよ」  薫は生クリームを舐め取った苺を唇から離して、ほら、と唐島の方へ差し出す。  ただのジェスチャーのつもりだった。  だが。 「うす」  腕組みをほどいた唐島が長身を屈めてきたと思うと、まるで餌付けされる野生動物のように、薫の手にした苺に自分の口を寄せた。 「……え?」  顔をわずかに傾け、小粒の苺をぱくりと(くわ)える。 「!」  唇が薫の指先に触れた。びくりと引っ込めようとした手首を、即座に掴まれる。  指の腹を舌先に撫でられる。ちゅ、という音が手元から響く。全身の血液が指の先端になだれ込んでいく気がする。  苺を丸ごと吸い取るようにして唐島の口が離れた。だが、手首はまだ握られたままだ。  コックコートの襟元の上に見える喉仏が、こくりと上下する。唐島は口に含んだ苺を一口で飲み込んでしまうと、薫の顔から目を離さずに自分の唇をぺろりと舐めた。  全身の官能が揺さぶられ、ぞくっと鳥肌が立つ。頭の中が真っ白になる。咄嗟に、握られていた手を激しく振り払ってしまった。 「お前っ……ざけんな」 「愛さん?」 「いきなり何しやがる」 「何、って」  唐島が無表情のまま首を傾げる。 「愛さんが、食ってみろって言うから」 「だからって人の手から直接食うとか、するか普通! しかも俺が先に口つけたやつ!」 「しないですか、普通」  唐島が眉間に皺を刻んで不本意そうな顔をするのを見て、薫の頭の中で何かがぱん、と音を立てて弾けた。
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