ハナの結婚

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 正雄とはこのことで何度も話し合いを持っていた。  八重は結婚するなら正雄がいいと思っているが、本人同士がそう思っていても多くの場合は親の一声で相手が変わってしまう。  正雄の両親と八重の父は本人たちの気持ちをくんでくれ、二人がそうしたいならそうしたらいいと言ってくれている。  それは正雄が次男であるという事と、八重の父が料理人だから、家を継ぐ云々という話が出ないからだ。とはいえ、いつまでも次男の正雄が家に居るのはさすがに問題なので……出来れば早めに所帯を持ち独り立ちして欲しいというのが本心だろう。  これ以上、正ちゃんを待たせるのは限界。  八重は一年くらいずっとそう感じていた。ましてや、明日からハナ様の待つ東京へ行くとなると、いつ戻れるのかわからないのだ。本当に戻ってこられるのかも、定かではない。  俯いて何も言わなくなった八重に正雄は焦れ「もういい。お前も俺以外の奴と結婚すりゃいいじゃねぇか」と吐き捨てた。  八重は思ってもみない返しに思わず(おもて)を上げた。そんなこと、正雄は今まで一度だって言わなかった。一緒に待つと言ってくれるだけだったのに。
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