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「出汁を変えたか」
「え」
「味噌汁」
「あ…鉄生さん、関東の生まれだから昆布出汁よりも鰹出汁の方がいいのかと思って」
私は西の出身だからずっと昆布出汁だった。それに慣れているところがあって今までそうして来たけれど、ふと彼は東の人だったと思い関東風の出汁の取り方を勉強していた。
「どちらでもいい」
「え」
「木綿子の飯は何もかも美味い。だから色々悩むな」
「あ、ありがとうございます」
出汁の味を変えたことに気付いてもらえて嬉しかった。
作った料理を褒めてもらったのも嬉しかった。
普段から嘘や余計なことをいわないからたまに出る褒め言葉がより一層私の心を高鳴らせた。
(あぁ……幸せだな、私)
その日の朝までは純粋にそう思っていた私だった。
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