煩いスクーピィ

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 さっきまで、あんなに日が照っていたのに……。  どうなってんだ?  思う間もなくザーッと雨が降ってくる。 「やばいぞ……」  慌てて周囲を見回したけど、入れるような岩陰は無かった。  ザックから雨具を取り出そうとして、全身にまた激痛が走る。 「ハヤクハヤクナントカシテ!!」 「分かってるよ。ちょっと……黙っててくれ、スクーピィ」  僕は怒鳴りつけたかったけど、声も上手く出ない事に気付いた。 「ダメヨウゴイチャダメ!!」  そんな訳に行くもんか。雨の中でじっとしてたら、それこそ死んじゃうよ。雨具は諦め、とにかく先へ進もうとして、何かに引っ張られたのを感じた。  なんてこった。地面から生えてきた植物が腕に巻き付いている。  雨が降ったせいで生えて来たらしい。こんな植物、今までに見た事もない。  なるほど、どうりで誰にも会わないわけだ。とんだ危険地帯じゃないか。  なんで僕はこんなところを歩いているんだ。 「オネガイシマスタスケテクダサイ!!」  そりゃ、僕のセリフだ。ほんとにいつもいつも煩いばっかりで……。  こんな遠くまで旅してきて、こんなところで終わってたまるもんか。 「オチツイテオチツイテ!!」  落ち着いてなんかいられるもんか。
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