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プロローグ
「うちにスクープはいらないの!」
北海道に雪が降り始め、もうすぐ冬休みと言うある日。
中央恵庭高校新聞部、パソコン4台とプリンターが置かれた部室の一室で、部長の西崎みはるが副部長の白井康永と話をしている。
部員2人では取材活動も限られており、月一ペースで発行される壁新聞の発行がやっとで、内容も学校行事の案内などがメインになっている。
その地味な活動内容が敬遠されてか、今年の新入部員はゼロ人であった。
この高校では部活動は3年夏までと決まっている。廃部の危機を何とかしないとと思って、康永が話を続ける。
「でもさ、戸磯庭園駅の幽霊、最近すごい噂になって見物客も多いって言うし、うちで真相つかんだら目立てるじゃない?」
「まあそうかも知れないけど、どうせ枯れ木かなんかの見間違いじゃないの? あの辺はひと気も無いし」
***
学校にほど近い戸磯庭園駅は、札幌圏の大動脈であるJR千歳線に属しているが、快速はおろか普通列車さえ一部は通過する。
なぜならお客さんは通学客と近くのビール園の利用者ぐらいで、いつもは閑散としているからである。
1ヶ月ほど前に女の子が気を失って怪我をしたことと、さきほどの幽霊の話以外にはこれといって変わったことも無い無人駅である。
島式ホーム2つの「二面四線」の構内配置で、中央に複線化された本線があり、外側にある待避線で普通列車や貨物列車が通過待ちをしている姿もよく見かける。幽霊にとっては居心地の良い場所なのかも知れない。
***
「それならそれでいいじゃん。新聞社主催の壁新聞コンクールも近いし、これを記事に出来れば入賞も夢じゃ無いって!」
「コンクール? ああ、先生が言っていたわね」
「そうそう。格好のネタだよな。このままじゃここは廃部になっちゃうし、実績残せば新入部員が来るかも知れないぜ」
かなり乗り気の康永に、みはるはしぶしぶと言った。
「あー、わかったわ。もう。今週土曜の夜は親いないから、一緒に行きましょ。勉強だって言っておけば大丈夫だし」
「よっしゃ、そしたら決まりだな!」
こうして、みはるは康永に言いくるめられ、ともに土曜日の夜に戸磯庭園駅に行くこととなった。
二人とも家は高校に近く、自転車で通っているので駅まで行くのも自転車で十分だった。
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