サキ先輩

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触れるだけの、まるで中学生のようなキスをした。そのまま抱きしめる。俺の両腕にすっぽりと収まったサキ先輩が「ずるいよ」とか細く呟く。 ずるくていいです。そう声に出せば、泣いてしまいそうだった。本当に嫌なら突き飛ばしてでも逃げればいい。ずるいひとだ。胸の表面が引き攣れる。だけどまだ、それでもまだ好きだと思う。 「あたし、健太が」 その先を聞きたくなくて、もう一度キスをした。開いた唇に舌をねじ込む。少し怯んだサキ先輩の腰を右手で強く抱き寄せた。 永遠なんてないんだよ、サキ先輩。俺らはいつだって今を生きるしかないんだって。 腹減ったら牛丼食べるし、ステーキだとなおさらいいし、フォアグラだって食べてみたいし、バイト終わりに誰かの家で夜通し麻雀してたら結局一限行けないし、可愛いこがいればヤリたいし。そういう目の前の欲望に邂逅してもんどり打って、押し流されて。流れた先であーやっちゃったーとか笑い混じりに振り返って、でもまー悪くなかったよねとか評価して、人生ってきっとそんなことの繰り返しなんだって。それできっといいんだって。 全部、俺のせいにしていいから。 今だけでいい。俺を選んでよ、サキ先輩。
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