午前三時のシンデレラ

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 公園まで行き慣れた道を歩く。片手には一応スマホ。ポケットには財布。万が一ユウタから連絡が来たら返事が出来るようにと。  でも、きっとアイツから連絡が来ることはない。喧嘩したときに謝るのはいつだって私からだ。全部、私が悪かったって謝る。それをユウタはなんとも言えない表情で頷いて俺も悪かったって謝るのだ。その顔が絶妙で嫌いだった。唯一の、彼氏の嫌いなところ。  もう付き合いたてみたいにドキドキしない割には熟年の夫婦みたいにほっこりと落ち着いているわけでもない。中途半端。子供でもないし大人にもなりきれてないどっちつかずだ。だから最近ギスギスしちゃうんだろうか。この前も掃除をどっちがするかで揉めたばっかりだ。 「相性、合ってないのかなぁ」  公園に到着して、ベンチに座る。近くに自販機があったから缶コーヒーを購入。あったかい。  ネガティブな時はネガティブな事しか考えられないみたいで、次々にもやもや嫌なことを考えてしまう。仕事も丁度一段落付いているところだし、人生を新しくリフレッシュさせてみてはどうだろう。そう、例えばユウタと別れてみるだとか……。 「あれ……?」  泣いていたみたいだ。自然と涙がこぼれ落ちる。  もう無理なのかもしれないだとか、もうこれ以上仲直りもできないのかもしれないだとか。  次から次からもやもやが押し掛かってくる。どうしよう、もう、このまま家に帰らない方が良いのかな。  手の平の中で暖まったコーヒーが急速に冷えていく。感覚が薄れていく。寒い、なぁ。
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