揺れる

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 私は一体、何をやっているんだろう。この7年間、いつも想っているのは私ばっかりで、雄星にとって私は何となく隣に居る人に過ぎないのかもしれない。恋は【やじろべえ】だ。想いが強い方が負け。私はいつも雄星の事で頭がいっぱいだ。そんな自分に踏ん切りをつけたかった。  パサパサになったパエリアを一人で食べた。1人で食べるご飯は、味気ない。残りの料理を全て冷蔵庫に入れ、美空はトランクに荷物を纏めて、出ていく用意をした。今夜は、幼馴染の利香のところに泊めてもらおう。それで、職場の近くで独り暮らしをしよう。玄関に立った時に、美空のスマホが鳴った。雄星からだ。  「美空、連絡遅くなってごめん。裕二から電話あったこと聞いた。言い訳するつもりはないけど、本当にごめん。」  その瞬間、美空の中で何かが弾けた。  「言い訳ぐらいしてよ。いつもいつも黙っていたって伝わる訳なんかないじゃない。私は、雄星の何?お手伝いさん?友達の一人?もう、うんざりだわ。さようなら。」  それ以来、美空は雄星からの連絡を全てブロックしていた。連絡をとったら、許してしまいそうだったから。  雄星と別れたのは、私のせい。私が待ちくたびれて疲れてしまったからだ。 同棲して6年、薬品メーカーに就職したあとも、雄星は研究一筋で帰りも遅い。口数も少ないので、ずっと一緒に居たはずなのに、彼の考えが読めなかった。さり気なく、結婚情報誌を置いていても、何も聞いてこなかった。 美空は、元々結婚願望が強かった為、地元の薬局に薬剤師として就職した。9時から5時の週5日、残業は無し。子供が生まれても、産休手当も出るし高望みしなければ、職場環境としては申し分ない。 同級生たちが結婚式を挙げるたび、取り残されて行く焦燥感に襲われる。心から祝福できない自分に嫌気が差す。
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