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 外は、大荒れの天気だ。  風はうなり、雨は窓をたたき、時折雷鳴が轟いている。  そんな音を室内で聞きながら、円(つぶら)はしくしく泣いていた。 「ほら、もう泣くな」  丈(じょう)がなだめるように手を伸ばした矢先、空気が切れた。 「イヴィンッ!」 「うわッ!」  言霊の詠唱と共に円と丈の間の床が真っ二つに裂けたかと思うと、すさまじい音がした。  さすが光速の技である。  音の方が後で聞こえた。
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