日々の受難

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「…まあ、それはいいが、これから俺の事は遼介って呼べよ?」 脈絡がなさすぎて遼介が誰のことか一瞬分からなかった。そういえばそんな名前だったな、この人。 「嫌です」 そんなの無理に決まっている。風紀委員の俺が率先して風紀を乱すなんてありえない。俺は真面目キャラでいくと決めたんだ。 「どうしてもと言うなら、理由を簡潔に分かりやすく、10字以上11字未満で答えてください」 「翔のことが好きだから」 「分かりやすくてよろしいっっっ!!!」 今まで静かだと思っていたが、とうとう我慢できなくなったのか某腐男子が鼻血を垂れ流しながら叫び出した。 千葉先生にそれは12字じゃないかと言ったら、漢字で書くんだよ、バーカ、と鼻で笑われた。 大人の汚さを再認識した一件だった。 大人気なさ呆れ果て、そろそろ馬鹿らしくなってきたため、ここは俺が折れてやるかと渋々頷いた。 「……遼介先生で、いいですか」 形だけは疑問形であったものの、それは有無を言わさぬ微笑を含んだものだった。 「それで許してやるよ」 今回はやけにあっさりと引き下がるな、と警戒心を顕にした俺は、無意識に一歩後ずさった。 けれどそんな些細な距離は遼介先生にすぐさま詰められ、気付けば片手で後頭部をしっかり押さえられ、空いた手で頬をするりと撫でられていた。 「今は、な」 ───唇に触れた優しい温もり。それは一瞬の出来事だった。 「「「「きゃああああああ!!!」」」」 「ホスト教師攻めサイコーっ!!!!」 愉快だ、とでもいうような表情で嗤った、教師あるまじきこの男を一体どうしてくれようか。 とりあえずはたった今特攻して行った北斗に任せてもいいかもしれない。 けれど。 それじゃ俺の腹の虫が治まらない。
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