日々の受難

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_遼介side_ 俺は今まで、何かに本気になったことがなかった。 ───たった一回を除いて。 けれどそれももう十年近く前の話で、自分はもう誰にも本気にならないし、なってはいけないと思っていたんだ。 『俺のこと、好きにさせてみてくださいよ』 翔が放った言葉は凍りついた俺の心を溶かして、同時に粉々にした。 『好きだよ、遼介』 何年も前、恥ずかしそうに頬を染めてはにかんだアイツの顔が浮かんだ。 そいつの瞳と、翔を重ねてしまった。 どこまでも綺麗で真っ直ぐな瞳は、昔自分が何よりも嫌ったはずの汚い大人に成り果ててしまったた俺にとって、とても眩しかった。 しかし、同時にそれが恋焦がれるほど自分自身が求めてやまなかったものだということに、今日やっと気づいた。 第一印象は、すごく綺麗なヤツ。 第二印象は、生意気だけど可愛いヤツ。 第三印象は、守ってやりたいヤツ。 俺の中で目まぐるしく変化していく翔の存在が怖くもあり、また嬉しくもあった。 光を受けて煌めく銀髪は翔そのもので、そのサラサラの髪を指に絡めてときたいと思った。 零れるほど大きな目を伏せた瞼にキスをしたい。 細いうなじに舌を這わせたら、翔はどんな風に啼くだろう。 そんなことばかり考えた。 アイツと翔は違うと頭ではわかっていても、どうしても惹かれたんだ。 きっとアイツが、俺に前を向くチャンスをくれたんだと思う。 いつまでもめそめそするなって怒っている気がした。
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