日々の受難

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その後は遼介先生をあしらうのが大変だった。なんであの人が大して面白みのない俺に構うのか分からないけど、面倒なことには変わりない。 「ねえ翔、俺はね、君のことが心配なんだよ」 自己紹介の途中、突然そう切り出した北斗に少し面食らった。 皆んなお前のために張り切って自己紹介してるんだから聞いてあげろよと思いつつ、そう言えば癖が強い連中のせいですっかり忘れてたけど、最初の北斗の奇行も俺のためを思ってのものだったということを思い出した。 「……なんで?」 出会ったばかりの俺に、何故北斗がそこまでしてくれるのか分からない。 その質問に、北斗は曖昧に微笑んだだけだった。 「その顔はよく分かってなさそうだね」 お願いだからもうちょっと自覚して、と呟いた北斗は、相変わらずよく分からない。一体何を自覚するんだ。 「……まあ、別にいいか。俺が守ればいいだけの話だし」 こいつは一人で自己完結しすぎだと思う。話に全然ついていけない。 やっぱり俺にはよく分からなかったけど、北斗が楽しそうにしていたからそれでいいかと思った。 「頼りにしてるぞ?北斗」 「……うん!」 それがどんな形であれ、誰かに想われているというのはとても嬉しくて、目を細めた。 北斗はその後少しフリーズしてたから、もしかしたら照れてたのかもしれない。分かりにくいけど。 「まあ、これ以上変な虫がついたら面倒だし、これからはもっと攻めていくから」 「は?」 やっぱり北斗の言うことはよく分からない。 「今は分からなくていいよ、今はね」 北斗の言うことを一々真剣に考えていたら、そのうち頭がパンクしそうなので、深く考えることはやめた。もう既に頭の中がハテナでいっぱいだけど。 でも、俺の事はお前が守ってくれるらしいし。 任せっきりって言う訳にはいかないけど、俺は俺らしく気楽にいこう。風紀委員が守ってもらうって変な話だけどな。 俺はこれからの学園生活に胸を踊らせ、自己紹介をするべく立ち上がった。 「花宮翔です。これから一年間、よろしくお願いします」 最後の奇声はいつまでたっても慣れないけど、俺は皆から受け入れられているのだろうか? そうだと嬉しいな。 そんな事を考えながら、俺は無意識のうちに微笑んでいた。 「今ので何人落ちたかな……?」 最後、北斗が溜息と共に苦笑しながら呟いたその言葉は、やっぱり俺には聞こえていなかった。
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