日々の受難

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「どうしたんだ?二人とも」 自分から食堂へ俺を誘ってくれた北斗と、鼻息荒く俺達に着いてこようとした天宮は、何故かこれ以上先に進むことを渋っているようだった。 「いや、……翔、とりあえずこれつけて?翔のためだから」 真剣な表情で差し出した手のひらの上にあったものは、新品の耳栓。 一体何に使うのかと頭を悩ませたのは一瞬で、やっと二人の悟りを開いたような表情に合点がいった。多分今の俺も二人と同じような顔になっていると思う。 北斗にお礼を言って素早く耳栓を装着すると、気持ちを切り替えて扉を開けることにした。 「いい?開けるよ……」 見た目の割にはその扉は軽くて、すぐに目の前には驚きの光景が広がった。 「「「きゃああああああ!!!!」」」 「「「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」 まるで高級ホテルのような贅沢な空間には、一泊置いた後に絶叫が響き渡った。 あまりの大きさに鼓膜がビリビリと震えた。耳栓をしていてもこの威力とは……恐るべし。 生徒達が口々に何かを叫んでいるが、幸い耳栓のおかげでよく聞こえなかった。 天宮が案内してくれた席に三人で座り、周りが落ち着いてきたのを確認して漸く耳栓を外した。 「……それにしても、すごいね。ここ」 ついつい思ったことが口を割って出てきてしまった。さっきの大歓声は無視の方向だ。 「え、ちょ無視?www抱かせてくれとか抱きたいとか踏みつけてくれとか言う声は無視ですか??君は彼らの魂の叫びを無視するの???」 スルーしてはくれなかったようだ。 何だよ魂の叫びって。汚物の叫びの間違いだろ。 「…そもそも、なんで俺にあんなこと言ってんのか分かんないし。それに、さっきは北斗と天宮が居たからあんなに煩かっただけだろ?二人はかっこいいしね。だから俺関係なくない?」 「うひょぉぉぉお!!まさかの無自覚だとぉお!?まさかここで無自覚という要素がプラスされるとは、君はどこまで総受けを極めるつもりなんだ!萌っ、萌をありがとう神様っ!!……あ、やばいティッシュ」 「うるせえ黙れ」 「はいっ、天宮裕翔黙りますっ!」 天宮はビシッと敬礼をしながらそう言った。制服が血で染っているため、その格好は警察じゃなくて犯人か死体のどっちかだけどな。
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