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「ところでっ!花宮くん……あのさ、花宮くんって呼びにくいから、翔って呼んでもいい?俺の事も裕翔でいいからさ!」
「……まぁ、それくらいいいけど」
「やった!!じゃ、試しに裕翔って呼んでみて!」
…急に何なんだ。
普通の人から言われても何とも思わない一言も、こいつから言われると何か裏があるのではと疑ってしまう。やっぱり日頃の行いって大事だな。
別に名前呼びに抵抗があるわけではないけど、言えって言われて素直に言うのはそれはそれで恥ずかしい。
「じゃあ……裕翔?」
正直に言うと、今まで友達とこのようなやり取りをしたことがなかった俺は、改めて顔をしっかり見るのは嫌で前髪の隙間から伺うように裕翔を見上げた。
「っ、」
え、赤い?
何故か照れている裕翔に俺の方が戸惑った。そんなに恥ずかしいなら、裕翔も言わなきゃよかったのに。俺なら断ると思ったのかもしれない。
けど、この光景傍から見たら凄いシュールだろ、という確信がある。男同士が照れあってる状況って一体何。
何だか馬鹿らしくなってきた。
「何、今の……反則、かわいかった…これが真のギャップ萌え……?って何考えてるの俺は!俺は腐男子で、傍観者で、よくて壁の中のセメントだってばっちゃんが言ってたのに!」
はっと我に返った裕翔はまたも意味の分からない言葉を呟いている。
俺は壁の中のセメント?
やっとこいつは自分が人種ではないことを認めたようだ。さっさと宇宙へ帰れ。
裕翔のこの状況はもうただの発作だと割り切っているので、とりあえず放置だ。その間に北斗にメニューの頼み方を聞こうと思ったのに、何故かその顔は死んでいる。この短時間で北斗に一体何があったのだろうか。
もしかしたら知らない内に俺が何かしていたのかもしれない。
何か怒ってる?、のか?
少し不安になってきて、北斗の制服の袖を引っ張ったその時。
「「「「ぎゃあああああ!!!!」」」」
今までとは比にならない程の歓声、と言うよりはもはや悲鳴が食堂内に響き渡った。
……やばい、耳死んだ。
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