日々の受難

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「じゃあ、俺もう戻ります」 俺は出来るだけ速くここからエスケープしたい。 結局お昼は食べ損ねたけど、これだけ沢山の視線の的になるぐらいなら俺は今すぐここを離れたい。……いや、もしかしてここは風紀委員の俺がこの場を納めなきゃいけないのか?いやでも校則違反したわけじゃないし。 「待て」 ──この時、俺は素直にその場を去っていればよかったんだ。 「聞こえないのか?花宮翔」 今まで微かに反響していた生徒達の声が、たった一人の人物の介入によって完全に消え去った。 腰に響くような甘さを含み、どこか危ない色気を放つこの声。 そんな人物は一人しかいない。 「……なんですか?」 染めていない艶やかな金髪に、意志の強い瞳。 その場にいる全ての人間が、そのオーラに圧倒され目を離せないでいるのが分かる。 理事長に次ぐこの学園の最高権力者───竜王路満は、とても楽しげで、どこか妖艶な笑みを浮かべてそこに立っていた。 何でこの人が……さっきまでは、俺なんか興味なさそうにしていたのに。 「お前に興味が湧いた。……お前と話がしたい」 困惑する俺のもとにやって来たそいつは、俺の耳元で囁いた。それはもう、夜を思わせるような耳に絡みつく甘い声で。 「今夜、俺の部屋に来い」 「っ……は?」 耳元で囁かれたエロボイスに耐えた俺を誰か褒めてほしい。いくら俺が男に興味がないとしても、流石にこれにはクラっときた。 けれど、言っていることはただの変態だ。 生徒A君の話だと、会長の部屋に行ってまっさらな状態で帰還できることはほぼ皆無らしい。毎回説明ありがとう。 勿論、そんなこと言われてついて行くのはそこら辺のチワワだけだ。 純粋に話だけして帰る、なんて雰囲気でもなさそうだし。そこで何で俺を誘うのかは分からないけど。 それに何より、俺は男と寝る趣味は持ち合わせていないのだ。 異論は認めない、という表情で俺はにっこり微笑んだ。 「遠慮しときます。俺はあなたに興味ありませんから」
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