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非日常の始まり
雲一つない澄み渡った青空の下。さわさわと揺れる葉の音が気持ちよくて、ついつい重力に逆らうことなく瞼が落ちていく。
「……はっ」
現実逃避も大概にしよう。
首を小さく横に振り、目の前に立ちはだかる大きな建物を見上げた。
俺は今、何故かお城の“ような”建物の前にいる。
え?何故“ような”と強調したのかって?
それは勿論、ここが中世ヨーロッパの貴族が住んでいそうな外観の建物だったとしても、
ここは子供達が学び、成長していくための過程である“学校”だからだ。
ここは決して御伽の国にある煌びやかなお城ではない。本来学校とは、生徒達が学ぶための施設が備わっていればそれで十分なのだ。それなのに…
こう長々と語って、結局俺が言いたいことは
「……ここはほんとに学校なのか…?」
これだけだ。
俺はこれからの三年間と青春を送るであろう学校を見上げ、誰にも聞こえないよう呟いた。そんなことしなくても、周りには人っ子一人居ないのだが。
周りには木が生い茂り、中学まで都会の高層ビルに囲まれて育った自分には見慣れないものばかりだ。
父さん、母さん、お元気ですか?
俺はこれからの未来に不安しかありません。
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