初めに

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初めに

 そこにいるが、そこにいない。  それは人知に及ばぬ怪奇現象や(わざわい)いを起こし、神出鬼没な存在であることから、人はそれを『(あやかし)』と呼んだ。  そして『妖』を視ることが出来る、珍しい人のことを『宵渚(よいなぎ)』と呼んだ。  彼らは個々に持つ神秘の『力』を使い、人と妖が共存する安穏(あんのん)()を作ることを目指す。  しかし中には、その『力』を悪用する者もいた。  この物語は宵渚の一人、(はく)という男の話である。  時は西暦一六三七年。  天草四郎が江戸時代初期に起こした日本最大規模の一揆、島原の乱が起きた年のこと。
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