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「お姉さん、いつ寝てるんですか?」
「パートのない日中。彼も仕事でいないし。それを言ったらきみもだけれど。なに、もしかして学校で居眠り?」
「……寝る時もあります」
「そういう時って、先生の授業に実がないことが多いそうよ。よくないことではあるわよ。気をつけなさいね」
押し黙るようにしながら、うなずく。彼女はおかしそうに眉を垂らし、俺の頭に、手のひらを載せた。ずっしり、重い。体温はないにひとしく、髪、頭皮を伝わって、冷気が流れ込んでくるようだった。
ぶる、と身体が震える。寒いはずなのに、触れられたところから、じわじわと熱がひろがっていた。
「あー、あったかい」
「子ども体温とか言うのは失礼ですからね」
「うんうん。きみは中学生だったよね? じゃあ、子どもであり、子どもでない時期だもの」
「そうですよ。成長期でもあるんですから、お姉さんなんてすぐ追い越せますよ」
「楽しみだわ」
話すうち、空はだんだんと明るくなってゆく。
「昨日の夜にね、若い男の人が落ちたの」
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