Daydream2:揺蕩う悪夢の中で

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「……蓮水くん、随分とその曲に思い入れがあるようね」  夕咲が目を細めて、しまわれた音楽プレイヤーの方を見つめた。言われた星來は、ピクリと肩を揺らして夕咲を一瞥する。紫と橙のオッドアイが、星來を見つめて瞬く。 「セピア色……なんだかノスタルジックな感じがしたわ」  簡単に見抜かれるんだなと星來は思わず苦い顔をした。 「あぁ……うん、これは大事な曲なんだ」 「んだよ、彼女が好きな曲とか?」 「彼女はいないよ」 「だよな!」 「ちょっとそれ、どういう反応なの?」 「いで!」  眩しい笑顔でそう言った律夜に、星來はすかさずノートを取り出して律夜の頭を軽く叩いた。「悪かったって」と一言謝罪しながら、律夜が大袈裟に痛そうな反応をして頭を(さす)る。  咳払いをして仕切り直しながら、律夜が口を開いた。 「でもさ、普段そこまでクラシック聞いてないせいちゃんが聞くってことは、余程大切なものなんだな」 「うん。小学生の時にさ、入院してた病院でよく話してた子が弾いていた曲なんだ」  懐かしむように目を細めた星來は、窓の外の夕焼けに一度視線を送った。 「……女の子かしら?」と夕咲が尋ねた。 「そうだよ。よく分かったね。星が好きで、ピアノが上手な元気な子だった。確か、隣町に住んでたかな。その子の影響で俺も星が好きになったんだよね」  まだ見えない星を探しながら、星來は微笑んだ。  夕咲は、それを聞いて口を閉ざした。星來をじっと見つめ、何かを懐古するような寂しげな目つきをする。  夕咲の目には、桃色が映りこんでいた。星來から、『その子』に向けられた愛が感じられたのだ。
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