Daydream2:揺蕩う悪夢の中で

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*  カタン、と小さく何かにぶつけた感覚で目が覚める。ゆるりと瞼を持ち上げて体を起こせば、眩しい橙色が目を眩ませた。  意識がはっきりしてきた途端に、耳奥に優しく静かなメロディが流れ込んでくる。イヤホンが吐き出す心地よいクラシックが、寝起きの星來の心に染みわたっていった。 「あら、ようやく起きたのね」  ぼんやりと放課後の教室内を見つめていれば、すぐ隣から落ち着いた声が聞こえた。イヤホンを外しながら横を向けば、隣の席で読書をしていた百鬼(なきり)夕咲(ゆさ)がこちらを見つめていた。 「ごめん、寝ちゃってたみたいで……」  星來は目を擦りながら苦笑した。  机上には、音楽プレイヤーと筆記用具。どうやら、日誌を提出し終えた後、親友を此処で待っている間に眠ってしまったらしい。 「いいのよ。疲れていたのでしょう?結構魘されてたわ」 「ほんと?」 「ええ。それに、良くない色が見えたわ。大丈夫?」 「うん、大丈夫だよ」  間違いなくあの夢のせいだな、と曖昧に微笑を押し出しながら、星來は音楽プレイヤーの電源を切った。  ここ数か月で見るようになった夢は、未だ途絶えることはない。見知らぬ狐面の少年が出てきたり、自分の過去の記憶を辿ったり……なにかと不思議な夢ばかりだった。 「夢を見るって、言ってたかしら」  思考をそのまま読み取られたかのような言葉に、星來は小さく肩を揺らした。 「うん。今日も似たような夢だった」 「そう……。何か得たものはあった?」 「全然。相変わらずよく分からないまま。あの夢が俺に何を伝えたいかも分からないし……」  星來は小難しい顔をして眉根を寄せた。段々と鮮明にはなっているように見えるが、夢はいつもぼんやりと霞んでいる。全てがはっきりと見えるようになった時、新たな何かが発見できるのだろうか。 「そういや、律夜(りつや)は?」 「まだ帰ってきてないわ。先生にでも捕まってるんじゃない?」 「あー……五限の時、爆睡してたもんね」 「よりにもよって担任の授業なのに。そのうえ、委員会まで同じなのにね。まぁ、自業自得だけれど」 「だね」  委員会のついでに説教を喰らう律夜の様子が安易に想像できた。思い浮かべながら二人で笑えば、どこかで誰かがくしゃみをしたような気がした。
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