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「そういえば百鬼、今日は何か用事があるって言ってなかったっけ?」
ふと時計を確認した星來が夕咲に問う。完全下校にはまだ時間があるが、用事のない生徒はとっくに下校している時刻だった。放課後になってからは、既に一時間が経過しようとしている。
「あら、まだ寝ぼけているようね」
「……違った?」
夕咲の呆れたような声音に、星來が申し訳なさそうに眉を下げながら聞き返した。
「それは昨日の話よ。急遽、従兄妹と会うことになったからって、私は一緒に帰らなかったじゃない」
「ごめん……」
「別にいいのよ」
自分はまだ半分夢の中にいるらしい。星來は目を擦って伸びをし、背中に乗っかる睡魔を振り払った。
「たまに会ってるみたいだけど、従兄妹と仲いいの?」
「どうなのかしらね。私より三つ上の男の子なんだけど、それなりに気は合うわね」
「へぇー、どんな人なの?」
星來が問うと、夕咲は僅かに眉間に皺を寄せて考え込んだ。
「……面倒くさがりだけど、やる時はやる人?後は、寒がりなのに年中アイス食べるくらいアイスが好きで、表情があんまり変わらない人かしら。あと、料理がすごく上手。分かりにくいけど、世話焼きで優しい人よ」
「なんか、百鬼みたいだね」
「どこがよ」
「うーん、なんとなくそう感じただけ」
「なによそれ」
見た事のない夕咲の従兄妹の姿を想像して笑えば、夕咲もつられて小さく微笑んだ。
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