Daydream2:揺蕩う悪夢の中で

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「ただいまー……」  星來と夕咲が他愛も話に笑い合っていれば、律夜が疲労感の滲む顔つきで教室に入ってきた。とぼとぼとした足取りで、二人の許へやってくる。 「あ、やっと帰ってきた」 「お疲れのようね。説教でもされたのかしら。灰色が見えるわよ」  夕咲が指摘すると、律夜が頭を掻きながら不機嫌そうな顔をする。 「話長いんだよアイツ……髪染めるなとも怒られたし……これは地毛だっつうの!」  夕焼けに似た鉛丹色の髪を指さして、律夜が叫喚した。 「律夜っていつもそれ言われてるよね」 「なんかオレのこと信じてくれないんだよな。染めてるのはむしろ、せいちゃんの方だっていうのに!」 「蓮水くんは日頃の行いがいいから見逃されてるんじゃない?」 「オレも日頃の行い別に悪くないけど⁉」  揶揄い混じりの夕咲の発言に怒ったように喚く律夜は、そう叫んだ後に盛大な溜息を吐いた。「信用ないよなぁ、ほんと」と不満そうに呟き、そうして、のんびりと星來の前の席に腰掛ける。 「音楽聞いてたの?」と、机上に置かれた音楽プレイヤーを一瞥した律夜が尋ねた。 「うん。まぁ、いつの間にか寝ちゃってたんだけどね」 「子守唄でも聞いてたん?」 「違うよ。クラシック」  星來が答えると、律夜が目を丸くして「クラシック?」と復唱した。 「意外だな、せいちゃん。ちなみに何聞いてたの?」    律夜に問われ、星來は音楽プレイヤーの表示を見せながら答える。 「ノクターンだよ。ショパンの遺作である第二十番」 「ほえ~全然分からん!」 「だよね、律夜だもん」 「どういう意味⁉」  呆れたように音楽プレイヤーをしまう星來がそう言えば、律夜は必死な顔で声をあげる。「そのまんまの意味だよ」と星來は悪戯に笑いながら返した。
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