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「佐樹さんありがとう」
「どういたしまして」
頬を緩めて柔らかく微笑んだ優哉は僕を強く抱きしめた。そしてすり寄るように僕の髪に触れる。伝わるぬくもりが心地よくて思わず目を閉じてしまった。
些細なことだけど頑張ってみてよかった。こんなに嬉しそうな顔を見られるのなら、またいろんなことにチャレンジしてみてもいいかもしれない。少しでも彼の思い出に残ることをしていきたいな。
「次はもっと頑張る」
「楽しみにしてます」
優哉が笑うだけで僕も本当に幸せだと思えるから、いくらでも喜ばせてやりたいって思う。そんなふくれ上がる想いは無限大になって僕の力に変わるんだ。そうするとそれがたまらなく幸福なんだってことにすごく気づかされる。そして彼が誰よりも愛おしいって改めて思うんだ。
「優哉、いつもありがとうな」
「大したことはしてませんよ。それに佐樹さんのためならなんだってできますよ」
「僕だってお前のためなら」
言葉を紡ぎ終わる前に唇をふさがれた。優しく触れた唇は何度も重ね合わせるうちに小さなリップ音を立てる。甘く濡れる感触に淡い吐息が漏れた。
「佐樹さんにそんなこと言われたらいい気になってしまう」
「なってもいいのに」
両手を伸ばして優哉の髪に触れ、それを梳いて撫でる。気持ちよさそうに目を細める表情を見るともっと触れたいと思ってしまう。余すことなく触れて彼をこの腕に閉じ込めてしまいたい。そんな願望が顔を出す。
「優哉、好きだよ」
言葉に想いを込めて吐き出すと、優哉は僕の左手を持ち上げてそこにそっと口づけを落としてくれた。指先に唇が触れると自然と身体の力が抜けていく気がする。
すべてが満たされた気分になるのだ。彼の想いも僕の想いも一つになったような不思議な気分。それが嬉しくて僕は頬を緩めて笑みを浮かべた。
いつだって優哉は僕の気持ちを丸ごと抱きしめてくれる。もらったものをただ返すだけじゃ足りないくらいだ。
「もっとお前に気持ちを伝えたいのに、全然足りない」
「じゃあ、佐樹さんを全部俺にください。そうしたら全部、俺の中に閉じ込めるから」
「……いいよ。全部、お前のものだから」
腕を伸ばして抱きしめ合うともつれるようにソファに沈み込む。触れるだけじゃない深い口づけを交わせば、心の奥まで彼に触れられたような気持ちになる。もっと欲しいとねだるように抱きしめて、自分から求めるように舌を絡ませた。
「……んっ」
隙間がなくなるくらい抱きしめ合って、何度も唇を合わせると次第に息が上がって瞳が潤み始める。そんな僕を見下ろす優哉は瞳に艶めいた光を宿す。
「佐樹さん、なに考えてるの?」
「お前のこと」
口元から滑り落ちた唇が喉元をくすぐる。そこから伝うように耳元を舌先で撫でられれば、肩が恥ずかしいくらい大きく震えてしまう。けれど流されてしまいそうな感情をこらえてしがみつくと、優哉は優しく背中を撫でてくれた。
「ん、優哉、次はお前の誕生日な。今度は、忘れないから」
「嬉しいです。すごく楽しみだ」
「うん、頑張るから」
まだあと三ヶ月も先だけど、いまからなにをしようかと僕も楽しみになんだ。今度はもっと頑張ってさらに驚いてもらいたい。僕にできること目一杯するからそれまでどうか待っていて。願いを込めてそっと口づけると、優哉は目を細めて幸せそうに笑ってくれた。
贈り物/end
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