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リナリア
この世で犯してはならない禁を、私はふたつ破った。
だが後悔してはいない。後悔できるものでもない。ああ、何処かに、今の私の心情を巧みに掬い上げてくれる吟遊詩人はいないだろうか。
禁を破ったにもかかわらず、否、だからこそであろうか。高揚する気持ちを抑えきれない。こんな狭く薄暗い場所などに隠れていないで、今すぐ馬車通りの真ん中に飛び出したい。両手を広げ空を仰ぎ、全身に恵みの雨を受けるのだ。
神よ。
あなたがこの地に遣わす雨は、人々の心を浄化し、罪を洗い流してくださる尊きもの。それを今、お与えになるという事は、神はきっと私の背を押してくださっているのだ。
私は立ち上がった。
そして、ぬかるむ馬車通りへと一歩踏み出した。
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