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彼はきょとんとした。窓から射し込んだ朝日を浴びた彼は、まるで天使のようだった。
「この国を出て、どこか遠くへ行こう。そこで私と一緒に生きていこう」
「……え?」
「この国は、私と君とのこうした関係を認めてくれないばかりか、厳しく処罰される。そんな決まりのない国へ行こう」
あまりにも突拍子のない、夢物語のようなことを話しているという自覚はあった。
だが私は本気だった。私はこの身も心も、そして私の人生すべても、彼に捧げるつもりだった。
きょとんとしたまま、彼は小さく首を傾げた。
「……この国を、出るの?」
「そうだよ」
「俺も、一緒に……?」
「君と一緒に生きていきたいから」
彼は目線を下げて、ぼんやりとリナリアを見つめていたが、やがて小さく、悲しげにため息をついた。
「俺は、あなたに救ってもらうような人間じゃないよ」
「そんなこと」
「親にも誰にも、おまえはいらないって言われたんだ。俺は誰にも愛される価値のない人間なんだ」
「誰でも愛される価値はある」
間髪入れずそう断言すると、少年の目がリナリアから私へと向けられた。
「君が、どうしようもなく愛しいんだ」
どうしたら伝わるんだろう。私は不甲斐なくも泣きたくなってしまった。
言葉が見つからなくて、ただただ彼を抱き締める。祈りの言葉ならたくさん知っているのに、たった一人の、大切な人へ伝えたい言葉が出てこない。
私は、
私はあなたを、
愛しています──
***
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