②ゴーシュのこと。

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「作家や漫画家…」 ジョバンニは、また一頻(ひとしき)り首を傾げて思案しました。 イーハトーヴには、様々な住人がおります。 その中で、ペンだこが出来るほど勤勉で、ペンだこが出来るほど書き物をする人と言えば…一体誰のことでしょうか? 「消去法で考え(たま)えよ、ジョバンニくん。」 ゴーシュが、そんな風に言うので、ジョバンニは益々首を傾げます。するとゴーシュは、ややガッカリしたように眉間を皺立てて言いました。 「消去法だよ、知らないのかい?条件に当てはまらない人を、次々に候補から外してゆくのさ。例えば、翼の生えた『夜鷹』くんは、候補から外して良いだろう?書き物をしそうにない山猫や、『雪渡り』が大好きなカンコとシンコも…まぁ、候補から外して良い。いつもカプカプ笑うしかない『クラムボン』も、ペンだことは無縁だろうなぁ。ほら、そうやって振るいに掛けてゆくのさ。残った内の誰かの手を調べたら、指の持ち主も解るだろうよ。」 それは、恐ろしく時間の掛かる作業だと、ジョバンニは思いました。そうこうしている間に、指が腐ってしまうかも知れません。 「それなら尚更急がなくては。」 小さく呟くと── ジョバンニは、ゴーシュに丁寧にお礼を言って去りました。
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