②ゴーシュのこと。

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ゴーシュは、セロを弾いていました。 粗末な家で毎日毎晩、たった一人で練習していました。 楽団で一番下手だからです。 毎日毎晩たった一人で練習をしておりますと、毎日毎晩とっかえひっかえ、森の仲間達がやって来ました。 猫が、カッコウが、子狸が、野ネズミの母子が──何かと理由をつけてはゴーシュのセロに合わせて、『ぱふぉーまんす』を見せてゆきます。 野ネズミの母子に至っては、ゴーシュが弾くセロの音の振動が、病弱な子ネズミに良く効くと言って、『超音波治療』をしてゆく始末。 …気が付けば。音楽を奏でていたつもりが、いつのまにやら、治療院の医者先生にされておりました。 以降、ゴーシュの家には、セロ治療を希望する動物達が、長蛇の列を成すようになります。皆、現代社会の『すとれす』を抱えていたのです。
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