ハッピーアワー

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鼻をかすめる部長が愛用している香水の香り。 ドキッと胸が大きく高鳴り、思わず部長の身体へ手を回そうとした。 その瞬間、ちらっと頭の中をよぎるダメ彼の姿。 ……まだこの手は回せない。 私は両手をグッと握りしめた。 「私、部長のこと好きです。大好きです。……でも、まだ彼と正式に別れてない……。」 「…ん…。」 抱きしめたまま相槌をうってくれる。 「正式に別れたら、その時は私から部長を思いっきり抱きしめてもいいですか?」 せめてもの自分自身へのけじめ。 彼への気持ちなんて、もうきれいさっぱりない。 けれど、彼と別れてない中途半端な状態で、部長と向き合うのは、部長に対して失礼だと思ってしまう。 「……もちろん。いつでもいいよ。……でも今は、もうしばらくこうしていたい。……いいよな?」 私を抱く腕に更に力がこもる。 太陽が完全に沈んでしまうまで、私は部長に強く強く抱きしめられていた。 END
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