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「付き合って二年だっけ?今の恋人と。」
「もうすぐ三年目になるところなんですけど……。」
「けど?何?」
「………浮気、現在進行形で三回目なんです。」
ぼそっと述べた事実に、表情を曇らせる部長。
「…やめとけ。そんな男。別れろ。」
苦々しく吐き捨てるように部長は言葉を放った。
「……別れようとは思っているんです。もう、好きって気持ちもないし、一緒にいたいとは思わないし…。」
「なら、なんで今日は朝から浮かない顔してたんだ?」
…やっぱり部長は気がついてたんだ。
昔からこうだ。
私の教育係をしてくれていたときから、何かあるたびに飲みに連れて行ってくれて、話を聞いてくれる。
そして聞き上手だから、言わなくていいようなことまで口から滑り落ちてゆくのだ。
「でも…、前みたいに……二回目の浮気の時みたいに『君しかいない、君が一番だから、君が必要なんだ』ってすがられたら、突き放せなくなって、結局だらだら恋人で居続けるのかもしれない……って思うと不安で…。」
部長はふっと口元を緩めると、私の頭を優しく撫でた。
……ふいに胸の奥がドキンと高鳴る。
「部長…?」
「お前は優しいもんな。かわいそうとか思うと、結局自分が苦しくても、相手が嫌な思いしないように動いちまうんだよな。」
「……ぐうの音も出ません…。」
全くその通りだなとは思う。
「……でもな、今回その優しさは捨てるべきだ。三回も浮気してんだろ?お前のこと、大切に思ってるわけがない。」
「頭ではわかってるんですけと……。」
私のことが大切ならば、そもそも浮気なんてしないよね?
一回目は出来心だったと言っていた。
初犯だからと、私も許した。
二回目は……私にとって都合のいい甘い言葉を並べられ、その流れで許してしまった。
そして今、彼は三回目の浮気をしている。
素直に言うと、二回目の浮気で私の気持ちは冷めたのだと思う。
私が必要と言ってくれたから、こんな私でも必要としてくれるんだ…、と思ってしまったから、別れられなかった。
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