ハッピーアワー

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連なっているあの山も、太陽が沈んでしまえば空と山の境目が曖昧になり、星の瞬きと人工物の光の瞬きとで、また違った表情を見せるに違いない。 私が足を止めたためか、私の手を掴んだまま部長も足を止める。 「……どこにでもあるはずの風景ですけど、すごくきれいですね。」 「…ああ。きれいだな。」 部長はそっと私の手を離し、あたしと共に目の前に広がる景色をしばし眺めた。 太陽が稜線にさしかかった頃、「なあ……」と部長が口を開く。 「はい?」 私は神秘的で幻想的な景色から目線を部長へと向ける。 そこには、ややバツが悪そうな顔をしている部長。 「その…、あの場の勢いでやってしまったが……迷惑だったか?……メッセージも……俺の気持ちも……」 ここまで手を引かれている間、ずっと考えていた。 「…読んですぐは驚きました。……だって部長、そんな様子、今までなかったんですもん。」 「お前に嫌われたくなかったからな。そりゃ隠すさ。」 「読んですぐは驚いたけど……嬉しかった。」 私は部長に微笑みかけた。 うまく笑えてるかはわからないけど。 「何で嬉しいのかなって考えてたら、気がついたんです。………私も好きだからなんだって。」 私の言葉に、大きく目を見開く部長。 ……部長は私が新人の頃から面倒みてくれた。 失敗したら怒ったり、慰めたりして支えてくれた。 上手くいった時は頭をぐしゃっと撫でてほめてくれた。 あまりにも近くに部長がいたから、この気持ちに気がつけなかった。 ダメな彼がいたから、なおさら自分の気持ちに気がつかなかった。 彼と別れる決心がついて、今までのことを思い返していたら、いつも部長が私の側で、私を支えてくれたことに気がついて…… そのことに気がついたら、もう好きが心からあふれていて…… こんな気持ち、ダメな彼に抱いたことなんてない。 「本当に俺と同じ気持ち……なのか?」 私はこくりと頷く。 すると、今まで抑えていたものをぶつけるかのように、ぎゅっと強く強く抱きしめられた。
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