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現在時刻は午後三時。本日は学校全体的に部活も無く少し早く帰宅する事ができる日なのだが、教室で行われているホームルームの時間が長引いている。
担任の先生の意味もなくつまらない上に無駄に長い話が教室に響いている。
ある者は欠伸をかき、ある者は睡眠を初めている。そんな事もお構い無しに先生は話を続ける。
あまりに退屈だったため、僕は自分の指を見ながら、今朝起こったことを思い出していた。
目覚まし時計が鳴り響き、その音に起こされる。眠気が取れず、イライラしながら目を開ける。知っている天井が視界に入る。
まだ完全に開かない瞼を擦りながら、布団から泣く泣く出る。
カーテンから漏れ出てる朝日は、目に毒で眩しさが辛い。
段々と意識が覚醒しだしてきて、自分の指におかしなモノが付いているのに気がついた。
先程から自分の視界の端に赤い何かがチラついているのが見えていたが、どうやら寝ぼけていた訳では無いようだった。
自分の右手の薬指に予約とでも言わんばかりに、しっかりとそしてハッキリと赤い糸が結ばれていた。
その糸はどこか遠くに伸びているようで、部屋の壁をすり抜けて消えていた。
訳も分からないまま、母が作ってくれているであろう朝食を食べるために、ダイニングに向かった。
「おはよう。 今日はちゃんと起きれたのね」
朝食の準備をしている母から少し嫌味ったらしく言われた。
「おはよう。 起きれてますよ前に寝坊しただけじゃん」
「学校のチャイムで起きた人が何か言ってる」
「ぐうの音も出ないです」
以前学校の朝礼のチャイムの音で起きた事がある僕は母に対してそれ以上言うことは出来なかった。
ふと右手に結ばれている糸について触れられ無いことに疑問を感じた。
「寝てる間になんかした?」
母のイタズラだと思い右手を見せると
「右手なんか見せてどうしたの? 何オシャレでもした?」
「えっ? 何も見えない? 糸とか無い?」
「何言ってるの? ついに頭までおかしくなった?」
「やかましいわ! 本当に何も見えない?」
「疲れてるんじゃない? 何も見えないわよ」
母には僕の指に付いている赤い糸が見えることは無く、それ以上その話題に触れる事が無いまま朝食を食べて家を出た。
登校中も通行人からも何も気にされず、僕ばかり周りをキョロキョロしていたため、そららに対して奇異の目で見られることはしばしばあった。
そんな今朝の事を思い出していると、急に肩を叩かれて声をかけられた。
「ぼーっとしてどうした? 退屈な時間はとうの昔に終わったぞ」
「嘘、もう終わってるの?」
そう返して周りを見渡すともう教室に残っているのは数人だけで、後は皆帰っていた。
時計の時間を確認すると、三時三十分になっておりあれから三十分間も考え事をしている計算になる。
「ごめんごめん。 そろそろ帰ろっか? 」
「右手ばかり見てどうした? なんか付いてんの?」
謝った僕に対して当然の疑問を投げつけてくる友人に対して僕は今起こっていることを話そうかと思ったが信じて貰えないと思ったため誤魔化すことにした。
「何か付いてるように見える?」
「何も無いな」
「だよね。 そろそろ帰ろうよ疲れた」
「お前待ちだったんだけど」
「それはごめんって」
そうしていそいそと下校の準備を整えて学校を後にした。
「折角早く帰れるんだしどこか寄らねー?」
友達がそう話しかけてくるとそれもいいなと思ったその時、自分の右手が引っ張られる感じがした。正確には指に巻きついている赤い糸が引かれている感じがした。
この先を追えば繋がっている糸の相手に会えると何となく思った僕は直ぐにこの糸の先を追いたくなった。
「ごめん急用を思いだした。 また明日」
「おい、聞けよ。 あぁじゃあな」
物分りの良い友人を持てたと思う。そう思いながら僕は全力で道を走り出した。
糸を辿りながら道行く人を避けながら、全力で駆け抜ける。糸の先に繋がっている人物に思いを馳せながら、まだ見ぬ相手を感覚と糸だけを頼りに会いにゆく。
なんだか青春をしている気分になった。
「なんか近づいてきたんじゃないか?」
ひとりでにそう呟くと路地裏に迷い込んだ。
「この辺の近くにいるはずなんだけど?」
周りを見渡し繋がっている筈の相手を探すが、見つける事ができない。焦りと諦めを含みながら近くを散策しているのだが人っ子一人見当たらなかった。
「骨折り損のくたびれ儲けってか?ちょっと期待した自分が馬鹿みたいだ。」
少しイライラしながら、来た道を引き返そうとすると目の前に女の子がいた。
それまで誰もいないはずだった場所に女の子がいた、僕の糸と繋がっていた。
その少女は前髪をぱっつんに切りそろえられていて長く美しい黒髪を持っていて、目はパッチリとして、口元も整っていて人形のようだった。美人と言うやつなのだろう。びっくりした僕はそんな感想しか出てこなかった。
彼女に声をかけようと思ったが、なんと言えばいいか分からなかった。
それでも赤い糸で繋がっていると言うと運命の人が浮かび上がったため
「あなたが僕の運命の人ですか? 」
自分でも小っ恥ずかしいと思いながら聞いてみると
「そうですよ。何年も待ちました。」
そうらしい。嫌なんでわかったのか聞いてみると
「私死に際にそんな事聞いたので」
「誰からですか?と言うか死に際?」
「あ、はい私死んでますよ」
よく見ると彼女の足はハッキリと見ることは出来ず影も無かった。
どうやら僕の運命の人は故人らしい。
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